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臨床研修体験談(林 美幸 先生)

指宿医療センターでの研修を終えて(研修期間 H27.4~H27.5)

九州医療センター 二年次研修医 林 美幸

 平成27年4月から2ヵ月間、指宿医療センターで地域研修をさせて頂きました。九州医療センターの初期研修ローテートでの地域研修期間は1ヵ月間と決められていますが、その中で指宿医療センターのみ2ヵ月設けられていたのが魅力的であったことと、最も“地域医療らしい”研修ができると期待し、選択させて頂きました。指宿医療センターでの研修は、大学病院や地方中核病院とは違った側面で医療を見直すことができた2ヵ月間でした。

 研修前は、地域医療とは限られた資源でprimary careを中心に行っていくというイメージを持っていました。このイメージは根本的に間違ってはいなかったのですが、限られた資源といっても、必要最小限の検査を行う上で特に苦労はしませんでした。また、紙カルテだったのでオーダーシステムや採用薬剤、注射器が現在研修している病院のものとは異なっていたため、当初は戸惑いましたが、オーダーの仕方や薬剤の名前、医療資源の形が慣れているものと異なっていたとしても、いずれ後期研修医として様々な病院に勤める際に、「そのタイプは使ったこと無いから分からない」等という理由は許されないため、どんなものでも対応できるようになるという面で実に良い経験になりました。そして、当直は医師1人が担当するため、専門外であっても診断から初期対応を行わなければなりません。それぞれの専門性を活かしながら全人的医療を行う姿に、大学病院とは違った魅力を感じました。

 研修内容についてですが、循環器内科と消化器内科を研修し、CVカテーテル挿入、胸腔穿刺、Aライン確保、心エコー、腹部エコー、上部内視鏡検査など手技を中心に経験させて頂きました。

 循環器でまず驚いたことは、循環器疾患以外にARDSや脳梗塞、腎盂腎炎やWegener肉芽腫、ATLなどの幅広い分野の入院患者を積極的に受け持っていることでした。初期研修1年目でも循環器を研修しましたが、心エコーは十分に学ぶ機会がなかったため、心エコーで心駆出率(EF)を出せることを目標にし、ほぼ毎日心エコー室へ通いました。最終的には救急外来で心臓の動きや弁膜症の有無、EFを出せるようにはなったと思いますが、やはり基本断面を出せるようになるにはもう少し訓練が必要だと思いました。また、4月は急性心筋梗塞の症例が多く、胸痛の鑑別からそれぞれの初期対応までしっかりと身に着けることができました。

 消化器内科では腹部エコー、上部内視鏡検査と外来をさせて頂きました。腹部エコーは毎日訓練した成果もあり、5月下旬に救急外来で尿管結石の患者がきた際にエコーで腎盂拡張を見つけることができ、自信に繋がりました。上部内視鏡は胃内や十二指腸の観察は数をこなすうちにできるようになりましたが、食道入口部への挿入が最も難しく、成功した時の感動は今でも忘れられません。

 指宿の人々は皆温かく優しい人々ばかりなのに、4月は環境の変化に慣れることができずに不満が多く、勿体ない時間を過ごしました。しかし5月に入り、自分でも驚くほど馴染み始めました。駅前にダンススクールがあるのを発見し、思い切って通い始めたり、病棟の看護師さん達とボーリングしに行ったり、手料理を食べさせてもらったりと、とても充実した日々を過ごせました。また、医局のソファーで他科の先生方とテレビを見ながら昼食を食べる時間が最も楽しみでした。各部門の方々と打ち解け、「林先生~!」と色々な所から気軽に声をかけてくださったのも嬉しく思っていました。研修を終えた今こそ、指宿に来て良かったと心から思い、指宿での日々が恋しいです。後輩には勿論自信を持って指宿をお勧めします。

 広大な土地を有し、高齢化が進む指宿市の医療を一身に担い、周囲の病院と密に連携し高い意識を持ちながら医療を行う指宿医療センターは今後ますます地域医療モデルの最前線として発展していくと思われます。これから新病棟を建設予定とのことなので、完成した暁には観光も兼ねて見に行こうかなと思っています。ありがとうございました。