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臨床研修体験談(土師 正二郎 先生)

指宿での研修~笑いあり涙あり大漁あり、人の温もりに溢れた2か月~(研修期間 H24.1~H24.2)

土師 正二郎

 2012年1月3日、「どんな出会いが待っているのだろう」と福岡より期待に胸をふくらませ九州を南下した。鹿児島ICをおり一路指宿へ、見えてきた大海原・地平線に胸が高鳴った。指宿に到着し官舎へ、これまた趣があり一人には十分すぎるほどの広さ。鹿児島といえどかなり寒く、早速温泉に入り床についた。

 翌日より循環器科研修医として勤務開始。まず驚いたのが担当患者さんの多さであった。福岡では平均して10人前後しか担当していなかったが、こちらでは引き継ぎの時点で40人程度。把握しきれるか不安になったが、循環器科の優秀な先生方の温かい指導により、徐々にリズムをつかんでいけた。指宿医療センターは主治医制ではなく、スタッフ全員で患者さん全員を見るという体制であった。病棟業務は非常に忙しく、まさに戦場のようであったが、スタッフ全員で一致団結し指宿の医療を良くして行こうという意志が感じられ、非常に刺激的であった。そのおかげで「きつくはあったものの、ストレスは一切なかった」。病院スタッフの皆さんが同じ方向を向いている気がして、心から感銘を受けた。

 次に驚いたのが疾患の幅広さであった。循環器疾患はもちろんのこと、呼吸器・脳循環・膠原病・代謝内分泌・皮膚科等々・・・。先生方の臨床能力の高さに憧れ、ついて行こうとさらにやる気が起きた。実臨床における治療のテクニックや、身体診察能力、穿刺・エコー等の手技、急変時の緊急処置等、様々なことを体で覚えていきそれを実感することができ楽しかった。

 次に驚いたのが各科の垣根の低さであった。医局は1つ、全ての科の先生方が同じ部屋におり短い昼食時間で談笑しながらコンサルトをしていた。研修医は私一人であったのだが、全ての科の先生方が良くして下さり、すぐに馴染むことができた。休日には釣り名人の岩屋先生・鹿島先生・川崎先生とともに東シナ海の一級磯へ上がり、足を引っ張りながらも、人生で感じたことのない強烈な魚の引きを味わい、釣った魚を肴に美味しいお酒をいただいた(休日に当直していただいていた院長先生、すいませんでした)。また、院長先生に開聞岳・唐船峡を案内していただいたり、当直明けには大海原を眺めながら温泉に入ったり、「働くときは働く、遊ぶときは遊ぶ」の教えの元、とにかく充実した毎日を送ることができた。

 病院スタッフの皆さん、地域の皆さん、救急隊の皆さんに支えられ、素晴らしい時間を過ごすことができたと思う。

 最後に、この2か月間を終えて何を得ることができたか考えてみた。臨床知識ももちろんそうであるが、それ以上に都市部の病院では見ることのできなかった「都市部で治療を行った後の患者さんのその後」というものを肌で感じることができた。そこに地域の病院スタッフの弛まぬ支えがあることを知れたことは、今後の人生においてかけがえのない財産になると思う。

 指宿の人々は人柄がよく、美味しいものもきれいな自然もある。忙しいけれど充実しており、様々な疾患も学べる。なにより、素晴らしい人達との出会いがある。医師を志した時の気持ちを思い出し、医師としての心構えの礎を気づくのに最高の機会ではないかと思う