NHKの朝4:30からのニュース番組の後半に、「騙されない劇場 ストップ詐欺被害! 私は騙されない」というコーナーがある。キャシュカードの変更が必要になったなどと言って銀行員に成りすまし、カードを預かり暗証番号を聞き出し、現金を引き出す被害が後を絶たない。そんな手口の実例を挙げて紹介し、注意を喚起している。それでも年間300億位の被害が出ているのだそうだ。
投資を呼びかけ金を集めて破産、お金が返ってこない事件もたびたび報道される。最近も1000億規模の負債を抱えて倒産した事例があった。投資をしてもらうと10~20%の還付が得られるなどとうたい、当然破綻をして原本も帰ってこない悪質な詐欺商法である。そもそも今頃、10~20%の利子を得られるおいしい話なんてないはずだ。それでも、酷い低金利で将来に不安を持つ人々がうまく乗せられて、身ぐるみを剥がれる、悲しい事だ。詐欺師たちは月収ウン百万も得て騙すことを辞められない。こうした人種にもっと厳しい制裁は出来ないのだろうか。
医療界にも詐欺まがいの治療が横行している。特に進行した癌は治療が難しいので、「わら」をもすがる気持ちの患者・その家族につけ込み、効きもしない治療に大金を貢がせる。がん細胞を自身の免疫でやっつけようという考えは昔からあり、古くはBCG療法、丸山ワクチンなどがある。しかし効果の客観的証拠はなかなか得られず、公的保険にも採用されなかった。患者さんの血液を取り、免疫細胞を試験管内で培養、増やして体内に戻す「免疫細胞療法」なども原理的には良さそうで期待をされたが、効果は実証されなかった。このほか「ペプチドワクチン」「サイトカイン療法」などが研究されたがどれも「効く」という証明は得られなかった。
この中で京都大学の本庶佑教授らは全く新しい発想で、がん細胞が免疫細胞にブレーキをかけて免疫機構が働きにくくしている仕組みを解明し、そこから免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」を開発した。同様の研究はアメリカテキサス大学ジェームズ・アリソン教授も行い、お二人ともノーベル賞を受賞された。効果が証明されたので2014年オプジーボは保険医療として採用され、正式に使われようになった。肺がん、皮膚がん(メラノーマ)、腎がんなどの20~30%が治るようになった。しかし、副作用の問題、治療成績の向上など課題は多く、研究は進行中、世界中で1000件を超える治験が進行中だそうだ。
それでも、末期がんの治療は難しい。一部の医師・クリニックが効果の証明されていない治療法で法外の料金を取り、患者・家族を騙している。何とも悲しいね。
(文藝春秋2020・3月号 がん免疫療法の正しい理解のために 本庶佑)
令和2年2月26日
国立病院機構指宿医療センター 総合内科
中 村 一 彦






