鳥頭なんて言葉があるのだそうだ、寡聞にして知らなかった。ネットで調べてみると、「物忘れの激しいこと」、あるいは「物覚えが悪くて記憶力の弱いこと」とある。齢76になり、そのような状態を自覚する。いつも、使い慣れている薬の名前が出てこなくて、こっそり本をめくったりして情けない。そんなんで、最近はなんでもメモして置くことにしている。
ヒトは「鳥頭」とか言って、鳥の知能?の低さを笑っているが、例えばカラスは利口らしい。イソップ物語にはこんな話があるそうだ。「ある日のこと、喉が渴いたカラスは偶然、少しだけ水が入っている水差しを見つけました。けれどもなんということでしよう、カラスが飲もうとしても水面が低すぎて、くちばしでは届きません。 そこで水差を倒して壊そうとしましたがあまりにも重すぎてそれもできませんでした」
「喉が渴いてどうしても水を飲みたかったカラスはあることを思いつきました。一つ小石をつかむと水差しの中にぽとんと落としたのです。そしてもう一つ、さらにもう一つと続けていきました。少しずつ水差しの水面は上がり、カラスは喉の渴きを癒やすことができました」 「いい話だね、でもおとぎ話だ」と思うかもしれない。確かにそれはそうだが、この話はカラス科について研究した米国のグループが行なったさまざまな実験によって現実であることがわかっているのだそうだ。
もう一つ、カラスの話。日本で観察された事例だ、「ある一羽のワタリガラスが口にくるみをくわえて道路の上を飛んでいた。信号機のそばの、横断歩道を見渡せる電線の上に止まると車の往来の激しい道路の上にくるみを落とした。何台か車が通り過ぎるころにはクルミの殻は割れていた。しかも、もっと驚くべきことがそのあとに続いた。カラスは歩行者信号が青になるのを待った。青になると横断歩道を渡る人々の間を飛びぬけてすっかり殻の取れた実を回収したのだそうだ」。このことはフランス、米国でも観察され、この分野の研究者に認められているようだ。カラスはなかなかの知恵者ということだ。
鳥だけではない、例えば砂漠のアリは餌を持って数百メートルの先から確実に巣穴に帰れる、森のチンパンジーは奥深いに密林の中でえさ場を探し、そこに最短で到達できるという。こうしたナビゲーション能力はヒトより優れているようだ。この豊かな命溢れる地球を大事に大事にしながら人さまも生きて行きたいものだ。
「鳥頭なんて誰が言った?」 エマニュエル・プイドバ 著 松永りえ 訳 早川書房
令和1年12月13日
国立病院機構指宿医療センター 総合内科
中 村 一 彦






