前任の鹿児島医療センターを定年退職した時、約500名の外来予約患者さんがいた。この病院で17年間診療し、院長になるまで毎日外来を診ていた。院長になっても週3日は外来に出ていた。それに、その前の鹿児島大学病院に24年在籍したので、約40年間、鹿児島市で診療したことになる。長い時間の流れの中で、地域の先生(医師)方、患者さんとそれなりの繋がりを持ってきたので、退職時はこれ位の外来患者さんがいたという事になる。
さて、退職時これらの患者さんをどうしたものかと考えた。多くの長い付き合いの患者さんを診療し続ける方法としては、引き続きこの病院で非常勤医師として外来を診るか、市内のしかるべき病院に勤務して希望される患者さんを診る方法などが考えられた。しかし、そのいずれも選択しなかった。長い付き合いの患者さんには大変申し訳ないと思いつつも、この病院を受診されている患者さんは循環器の専門医療を希望されている方である。
その希望には後輩の優秀な医師が答える力を持っている、私が何時までも「自分が診ない」と思うのはおこがましいと思った。例え、今回私が診る体制を作っても何時かは退かないといけない時は来るわけで、其の時期が今来たと思って頂ければと考えた。そんなわけだ、今まで診ていた患者さんには大変申し訳ないと思いつつ、後輩医師に託することにした。
定年後は指宿病院の田中院長にお願いして、非常勤医として週3日、外来診療を中心にして働くことにした。総合内科医としての辞令を頂き、今までの循環器専門医としての専門分野の診療から、内科全般を診る立場になった。循環器疾患の患者さんを診ると「今日は循環器専門の先生は診てくいやらんとな」と言われ事もあった。熱発、検診など一般内科の患者さんを主に診ている。それでも今まで自分で診断したことのない「マラリア」「眼窩腫瘍」などをみつけて、それなりに自己満足している。
患者さんに「先生はやさしいね」「よく説明してくれてありがとう」「良い先生に会えて良かった」などとリップサービスして頂くと素直に喜んでいる。
診療以外では「鹿児島県保健福祉部地域医療特別顧問」という肩書を頂き、研修医を増やす活動、鹿児島県医師会常任理事として「医師確保」の仕事にも取り組んでいる。その中で、今まで経験しなかった出来事や新しい出会いを頂いている。定年という区切りを頂いたので、そうした新しい事が出来ていると感謝している。迷惑をかけた面も多いと思うが、この年、このキャリアでないと出来ないこともあると思うので、この形で少しお役に立てれば良いかなと考えている。「捨て難しとて捨てざらむや」(徒然草)
平成23年9月28日
国立病院機構指宿医療センター 総合内科
中 村 一 彦






