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指宿 菜の花 通信(No290) 田舎医者の流儀(265)・・・熊被害

 くまモンは人気キャラだが、今年の熊被害は死亡事故も多く、観光など各方面に深刻な影響が出ている。環境省のまとめでは、これまで一番人身被害が多かった2023年と同じようなペースで被害が発生しているという。鹿児島県をはじめ九州は熊がいないが、北海道、東北地方で大きな被害が出ている。秋に熊が人里に出没するのは、森のどんぐりが凶作になるからだと言われている。確かにそれは一つの要因だが、それだけで熊は人里に現れない。食糧を求めて、たまたま集落の近くに行った時に、収穫されない柿や栗が放置されていたり、家の軒先に漬物とか味噌が置いてあったりするとそういったものが誘引となって熊が森から出てくるという。

 今、多数の熊が人里に出没している直接の原因は、どんぐりの凶作という。長期的な視点で見ると、ここ40年ぐらいで熊をはじめ、いろいろな野生動物の分布範囲がものすごい勢いで拡大している。ツキノワグマの分布域はこの40年間で約2倍に広がり、一番の原因は日本の社会の変化という。少子高齢化、都市への人口集中が進み、奥山や中山間地域から人が撤退している。人がいなくなった集落は耕作地も放棄され、森に戻っていく。人の撤退に合わせて日本中で野生動物の分布域が広がっている。今年は熊の出没が大きなニュースになっているが、実は2000年代に入ってから秋に多くの熊が出没するということが起き始めた。

 熊の被害の増加は、単に木の実の凶作だけが引き起こしているわけではないという。根本的には熊の絶対数が増えているのが原因で、秋田県は2023年度に2000頭以上を駆除したが、依然として熊が多数出没するのは、山の中に個体が増えあふれ出しているからだという。環境省の最新の集計(中央値)によると、北海道にはヒグマが約1万2000頭、本州以南にはツキノワグマが約4万2000頭以上生息している。全体として増加傾向で、 宮城県では08年度の633頭が16年後の24年度には2783頭に増加した。全国の駆除数は23年度に9099頭、24年度に5136頭に上っている。増加理由の1つは、長い期間にわたり熊が保護されてきた点にあるという。ハンターは狩猟を自粛し、わななどでの捕獲も抑制し、捕まえても殺さず奥山に返すことさえある。こうした保護の取り組みが、熊の数を増やしてきたという。

 イノシシやシカの食害被害も農家にとっては深刻だ。私の農園でもイノシシが出没し、スイカなどは食べごろ・収穫時期にやられてしまうことが多かった。今は柵をして侵入を防止している。近くのご婦人はスイカなどをもう植えないようにしているという。

令和7年12月5日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦