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指宿 菜の花 通信(No280) 田舎医者の流儀(255)・・・ムヒカ元ウルグアイ大統領亡くなる

 ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領が亡くなったと報じられた(5月13日)。清貧の価値観に裏打ちされた質素な生き方は国境を越えて多くの人の共感をよんでいた。2015年12月「菜の花通信」No75にムヒカを取り上げた。

 2012年6月20日から3日間、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで国連の「持続可能な開発会議(Rio+20)」(以下リオ会議)が開催された。188力国および3オブザ—バ—から、首脳と閣僚級を含む97名の他、各国政府関係者や国会議員など約3万人が参加し、自然と調和した人間社会の発展や貧困問題が話し合われた。この会議の最後に登壇したホセ・ムヒカ、ウルグアイ大統領が演説した。(世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉、佐藤美由紀著、双葉社)

 「ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てば、この惑星はどうなるのでしよう。息をするための酸素がどれくらい残るのでしようか。西洋の富裕社会が持つ傲慢な消費を、世界70億〜80億の人ができると思いますか。そんな原料がこの地球にあるのでしようか。可能ですか。なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか。マーケッ卜経済の子供、資本主義の子供たち、つまり私たちが、間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作ってきたのです」

 この演説はネットなどで世界中に発信され、衝撃を与えた。ホセ・ムヒカ大統領はただ口先でそう言ったわけではない。彼の生活は農場に住み、ぼろ車に乗り、大統領の給与9割は寄付をしている。自らの資産は少なく、お手伝いさんも置かず、自らが料理し、生活が自立している。そして、彼は世界で最も貧しい大統領と言われた。しかし、彼は言う「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、 いくらあっても満足しない人のことだ」と。

 残念ながら、ムヒカの思想・生き方はその後の世界に拡がらなかった、逆に世界は金ぴかの指導者を選び、彼らは「無限の欲」があり理念なき戦争も厭わない。ウクライナではロシアの空爆が続き、ガザではイスラエルの仁義なき空爆が続いている。多くの子供・女性など非戦闘員が犠牲になっている。世界中は毎日この映像を見せられているが残念ながらなすすべもなく見ているだけである。腹立たしい現実だ。

 人殺しをしながら、自らの立場の正当性を主張する、爆弾で解決しようとしたらまた新たな恨みを発生させる。攻撃した方も永遠に穏やかに暮らすことは出来ない事は歴史が証明している。

令和7年7月11日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦