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指宿 菜の花 通信(No270) 田舎医者の流儀(245)・・・2025年

 明けましておめでとうございます、21世紀四半期に当たる2025年になりました。今年の正月もいつものように朝5時ごろは起きて、薪ストーブを付け、家人が起きてくるのを待った。頼んであったおせち料理を開けて、家人の作ったお雑煮と頂いた。ところで2013年和食がユネスコの「無形文化遺産」に登録されたが、雑煮がその評価の一因になったのだそうだ。「正月の一月一日の朝に全国民が雑煮を食べる」「そんな国は他にないし、それは世界的に見ても特殊な文化」だと。(ほんまに「おいしい」って何やろ? 村田吉弘著 集英社)

 昨年は80歳の年であったが、幸いに入院するようなこともなく、大過なく過ごした。周りを見渡すと元気に活躍していた外科のDRがお風呂で突然亡くなり、同級生の開業のDRも脳梗塞で亡くなった。ゴルフ仲間も血管病・肺炎などで入院した。それが私はといえばゴルフも出来たし元気にラッキーな年を過ごした。しかし、この年なのでいつお迎えが来るか判らない、元気な日々に感謝しながら暮らしている。

 さー81歳のこの年を無事にのり切れるか。私の健康戦略は過食を避け出来るだけ少食に、動物性たんぱく質を少なくして、植物性のたんぱく質をとる。できるだけ運動をする、今のところ農園にはバスに乗っていくので、一日5千歩は歩く。老齢になるとDNAが傷ついてがんや血管病、認知症を発症してくる。それを抑え込んでいくには修復をするサーチュインを活性化していく必要がある。その対策としてNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクオチド)(サプリメント)を摂取している。NADはビタミンB3の前駆物質でサーチュインが働くためには必須の物質であり、高齢になると体内の濃度が低下するので補う必要がある。

 もう一つ老化対策として重要な薬が糖尿病薬のメトホルミンがである。メトホルミン服用者のあいだで認知症、心血管疾患、がん、虚弱、うつ病になる確率が低減することが確認され、老化研究者に注目されている。メトホルミンはカロリー制限に似た効果が現れ、ミトコンドリアの代謝反応を制限する方向に働く。するとAMPK(AMK活性化プロテインキナーゼ)が活性化され、ミトコンドリアの機能を回復させる。メトホルミンはAMPKを活性化させる力によりNADの濃度を上昇させサーチュインのような老化への防御機構を始動させるという。私は糖尿病があるのでメトホルミンを服用しているが、老化対策として引き続きこれを服用していきたい。食事・運動療法を基盤にして現代の老化科学の成果を取り入れた療法を従来どおり続け、81歳を乗り切りたい。

(参考文献:老いなき世界 デビッド・A・シンクレア 東洋経済新報社) 

令和7年1月8日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦