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指宿 菜の花 通信(No267) 田舎医者の流儀(242)・・・ワクチン

 11月下旬になり、さすがに寒くなってきた。農園でシイタケが取れた、大きな奴は直径20センチもあり家人が驚いていた。夕方帰り際に収穫し、夕食時、焼いて塩で味付けして食べた。美味しかった。キノコ食べると免疫力がアップするとかいうけど、通常量食べてそんなことを期待しても無駄だ。世の中にはこんな食事、サプリメントで免疫がアップするというような話が多い。

 ご丁寧な事に「科学的」に見せようと、血液中のNK(ナチュラルキラー)細胞が増えていると宣伝しているものもある。血液中のNK細胞数がさまざまな要因によって簡単に変化する。朝血液に存在する免疫細胞は全体のわずか2%程度で、免疫細胞に関する限りよくて全体の2%ぐらいしか見ていないということになる。更に、血液中の、NK細胞数やNK細胞活性は日内変動が見られる。朝と夜中では2倍ぐらい値が違う。

 インフルエンザ予防接種を受けた。我々は患者さんと接するので、病院では全員接種が原則になっている。私自身は近いうちにコロナワクチンも受けようと思っている。トランプ政権はワクチン懐疑派のケネディ議員を厚生行政のトップに据えるそうだ。アメリカのワクチン接種が後退するのではと危惧されている。エビデンスのはっきりした事実を政治的「信条」で否定的に運用されることが懸念されている。困ったものだ。

 アメリカでインフルエンザワクチンとアルツハイマー病の発症頻度が検討されている。2009年から19年の約10年間に65歳以上で6年以上認知症の症状がなかった集団から約93万例のインフルエンザワクチン接種有りと無しのぺアを偏りがないように選び(平均73.7歳、56.9%女性)、その後のアルツハイマー病の発症頻度を比較したもの。その結果、65歳以上の集団ではインフルエンザワクチン接種の回数が増えるに連れてアルツハイマー病の発症頻度が下がっていた。つまり、インフルエンザワクチン接種はアルツハイマー病の発症防止に有効であったということだ。おそらくワクチン接種がインフルエンザ発症リスクを下げ、あるいは重症化リスクを下げ、このために二次的にアルツハイマー病の発症リスクが下がったと考えられる。

 過去15年間にわたりヒトパピローマウィルスワクチンを接種してきたスコツトランドでは12〜13歳世代のワクチン接種率は約8割に達する。接種から約12年間観察した時点で、ワクチン未接種者ではこれまでとほぼ同じ頻度で浸潤子宮頸がん発生していたー方、12〜13歳時にワクチン3回接種した人たちでは接種後の女性子宮頸がんの発生率がゼロとなっていた。より年代の高い世代においても、ワクチン接種の回数が増えるとともに浸潤性子宮頸がんの発生率が明らかに低くなっている。ワクチン接種によってこの種のがんはこの世の中から無くすことができるのではないかと指摘されている。

 重篤な副反応が起こる率は、ワクチンごとに異なるがワクチン全体では100万件に1〜10件程度の割合であるとされている。アメリカの調査では、飛行機で死亡する確率は18万8364分の1ということですから、その5倍のおよそ100万回乗ると5回死亡事故に遭遇する可能性があるということだ、ワクチン接種による重篤な副反応の確率とよく似ている。ワクチンは決してゼロリスクではなく一定程度のリスクがあるが、かなり小さなリスクである。

(参考文献;あなたの健康は免疫で出来ている 宮坂昌之 インターナショナル新書)

令和6年11月27日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦