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指宿 菜の花 通信(No264) 田舎医者の流儀(239)・・・ノーベル平和賞

 10月中旬になり、朝夕はだいぶ涼しくなり、半袖では寒いぐらいだ。農園ではコスモスの花が咲き、秋らしい風情になってきた。先日、ホウレン草、ネギ、しんぎくの種を撒き、晩秋に収穫できるのを楽しみにしている。そんな中、日本被団協のノーベル平和賞の受賞のニュースが飛び込んできた。戦後70年近く続けられてきた地道な原爆反対の声が認められたことを大変うれしく思う。

 被団協は1956年に結成され、地道な原爆反対の運動を続けてきた。世界唯一の被爆国として声を上げ続けてきた。今回の受賞がプーチンや金書記が核兵器の使用をちらつかせる中で蛮行を阻止する一助になれば嬉しい。オバマ前アメリカ大統領はじめ多くの指導者が広島の原爆資料館を視察し、被害の実相を知ろうとしてきた。プーチンや金書記にも原爆被害の実相を見て欲しい、指導者になろうとするものは必ずアウシュビッツや原爆資料館を見るべきだ。国賓として来日した指導者は必ず原爆資料館に案内するようにしたら良いのではないか。

 10月14日ノーベル経済学賞の受賞者が発表された。今年もまたアセモグル教授(マサチューセッツ工科大学)ら米国の3人の学者の受賞となった。私は国のバランスよい発展のためには人文科学分野の研究が盛んに行われ、その成果が国造りに反映されるべきであると思っている。過去、日本人の受賞者はいない。経済学賞はアメリカ人の受賞が65%を占めている。次に多いのはイギリス、ドイツ、ノルウェーなどヨーロッパ諸国など、今の体制下ではロシアや中国からのこの分野の実証的研究の発展は望めないので今後とも受賞は難しかろうと思う。今回ノーベル経済学賞を受けたアセモグルさんは「国家の長期的な繁栄には民主義的な制度が重要だとし、法の支配が乏しく、国民を搾取するような制度を持つ社会は短期的には成長しても長続きはしない」と指摘する。しかし、皮肉なことに、人文科学的研究の最も進んだアメリカでそれと対極にある人物が大統領になろうとしている。

 実証的研究の成果はすぐすんなりと認められるわけではない。ナオミ・.オレスケスは1993年から2003年のあいだに発表された「地球規模の気候変動」をテーマとする928本の論文を精査し、気候変動は真実だとする科学界の立場に否定的なものは一本もないことを確認した。2012年にはジヱィムズ.乙.パゥエルによる追跡調査がおこなわれ、1971年から2012年に発表された気候変動に関する13950本の査読付き論文のうち、地球温暖化を否定しているのは、わずか24本(0.17%)であることがわかった。これだけの確かなエビデンスがあっても、地球温暖化の事実を認めない人、政治指導者がいることも悲しい現実である。

令和6年10月18日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦