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指宿 菜の花 通信(No259) 田舎医者の流儀(234)・・・徳田虎雄論

 徳田虎雄さんが亡くなった。病院、職員万人を擁する日本最大の病院グループ「徳洲会」を一代で築き上げた稀代の医療人である。鹿児島の離島医療は徳洲会が担っている、その意味では彼の医療に対する貢献は大きいと言える。

 彼とは回時間づつ話したことがある。一回目は私が鹿児島で循環器の診療を始めて以来、世話になっている大先輩の先生が飯でも食わないかと誘われたので出かけたところ、そこに虎雄もいてホテルの一室で時間ぐらい徳洲会に来いと口説かれた。二回目はこれも循環器の別のが飯でも食いませんかと言われて出かけたらそこに虎雄がいた。ここでも時間ぐらい徳洲会に来いと口説かれた。彼はそれなりに私の事を調べていて、「先生はこれ以上大学にいても上には上がれないよ」「鹿児島の徳洲会をあなたに任せるから、その方がやりがいあるのではないか」と熱っぽく語った。大学で私が「出世」出来ない事はその通りであった。

 私には鹿児島の循環器診療のレベルを上げたいという強い思いがあってやっていたので、虎雄の口説きに心動かせられる事はなかった。それに彼の政治家としての側面には賛同していなかったし、そのやり方に強い違和感を持っていた。彼の考え・やり方は「目的が正しければ、いかなる手段も厭わないというやり方であった。奄美での選挙ではあからさまな買収・利益誘導などなんでもあれであった。彼にとっては「目的」が崇高であれば手段は法を犯そうと構わないという考えであった。彼の自家用の運転手さんは大変だった、もっとスピードをだせ、信号でもたもたするなと罵倒されたという。

 虎雄は信じられないほどの資金をつぎ込んで目的を達しようとした。徳洲会病院の売り上げは年間億と言われている。そこで購入される医薬品や医療機器は一族の支配する会社を経由して購入される。書類上の操作で莫大な資金が捻出されるシステムになっている。株式会社徳洲会(社長は虎雄の長女)が多額の利益を上げていることは周知の事実である。そこからねん出される豊富な資金が彼の政治活動を支えた。石原慎太郎元東京都知事の選挙資金を支えたのも虎雄である。猪瀬元東京都知事も徳洲会から多額の借り入れをして問題視された。そのずぶずぶの関係から都立病院の徳洲会への売り渡しが噂されたこともある。

 鹿児島での虎雄は政治家としての側面が強く表に出ていた。あまりにも生々しい買収選挙・利益誘導があたり前であり、鹿児島人にはそれが虎雄へのアレルギーとなった。

令和6年7月31日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦