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一般不妊治療について

不妊とは

 一定期間、避妊することなく通常の性交渉を継続的に行っているにも関わらず、妊娠の成立をみない場合に、不妊といいます。この一定期間というのは1年とするのが一般的ですが、夫婦の年齢に応じて半年の不妊期間で検査を勧める場合もあります。日本の夫婦の3組に1組が悩むという不妊、けして珍しいものではありません。不妊治療の話題に関して、皆様も身近に耳にする機会があるのではないでしょうか。

 当科では不妊症に関する説明と不妊原因を評価するための一通りの検査、一般不妊治療までの内容を行っています。不妊治療に関する詳細な内容と説明は不妊治療の専門施設の記事など、インターネット上には沢山ありますので、詳しい内容は他に譲ることとしますが、このコラムでは私が令和4年度、一般不妊診療を行うにあたり感じたこと、指宿市にお住まいの方にお伝えしたいことを書いてみます。

一般不妊治療と生殖補助医療

 不妊治療とは大きく、一般不妊治療と生殖補助医療に分かれます。一般不妊治療は自然周期、または排卵誘発剤を用いてのタイミング指導や人工授精での不妊治療をいい、生殖補助医療は一般不妊治療からステップアップした場合に行われる体外受精・胚移植を中心とした一連の診療を指します。一般不妊治療は自然に近い治療法で、特別な設備を要さないため、一般に殆どの産婦人科の施設で対応することができます。一方で生殖補助医療は受精卵の管理を行うために専門の設備と人員を必要とするため、鹿児島県下でもいくらかの専門施設でしか実施できないのが現状です。

 妊娠には受精するためのタイミングが重要です。いずれの治療法でも妊娠の適期は決まっており、1回の月経周期に1度しかありません。時にタイミングを調整しながら適期を見定めることが最も重要になります。一般不妊治療においても排卵のタイミングを正確に把握することが必要で、排卵誘発剤を用いない場合でも少なくとも1周期に1度、排卵誘発剤を使用する場合は少なくとも2度は受診が必要となります。しかしながら生理周期には個人差があり、初めの1,2周期は正確な排卵時期を見定め確実な排卵の徴候を確認する必要があり、実際には更に複数回、追加での受診をお勧めします。加えて、不妊の検査も徐々に進めていくため、1周期あたりの受診回数は更に増えることがあります。

 不妊診療の一般的な流れとして一般不妊治療→生殖補助医療へと徐々にステップアップしていくことが一般的です。自然な方法に近い一般不妊治療のみで妊娠に至る夫婦が多いことは事実ですが、上記のように一般不妊治療の段階から受診回数という点では比較的頻回の受診が必要になります。生殖補助医療に関しては診療行為がより高額になることも踏まえ受診のタイミングもよりシビアになり時間的、金銭的負担が大きくなります。

 不妊治療は生殖補助医療まで含め、すべて鹿児島市で対応できることは事実ですが、一般不妊診療で妊娠に至るご夫婦にとって、指宿で治療できる選択肢があれば、通院の負担を少しでも軽減できると考えています。また、2022年4月より生殖補助医療も含めた不妊治療への保険適応が始まったことも、一般不妊治療レベルの内容は地域の施設でもしっかり提供しなければいけないと考える理由の一つです。現在、当科の医師は鹿児島大学病院からの派遣医師で構成されておりますので、医師の異動も度々ありますが、基本的には鹿児島大学病院の生殖不妊グループの先生方に連携、相談しながらの診療を行っています。2023年度も同様の体制で一般不妊診療を継続予定です。妊婦健診や女性のヘルスケアサポートを主とした診療を行いながらの不妊診療となりますので、不妊の専門医療機関と比べますと我々医師も含め診療科として拙い点も多々あるかと思います。指宿の方にとって少しでも力になれればとの思いから一般不妊治療も対応させていただいておりますので、是非ともまず御相談いただければ幸いです。

2022年度のご報告 

 2022年度の7月以降、10 数人程度に不妊治療に関する資料を用意して一般不妊治療についての説明を行っています。そのうち11人に不妊検査・定期的な通院でのタイミング指導を行い、2人は検査のみ、3人は検査やタイミング指導ののち他院に紹介、4人は妊娠されています。1人はタイミング指導を継続しており、1人は来院されなくなりました。

                                              文責  鮫島 浩継