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指宿 菜の花 通信(No202) 田舎医者の流儀(177)・・・監査

 いつの間にか、年の真ん中6月になってしまった。国道3号線沿い甲突川のアユ釣りが解禁になり、釣り人たちが並んでいる。例年、この後は梅雨入りしてくるので間もなく雨の季節になっていくのであろう。農園では昨年植えたバラが赤、白、ピンクの花を咲かせた。かなり多く咲いたのできれいであった。グミは今年もいっぱい実を付けた。完熟するまで待っていると渋みが取れておいしくなる。枝ごととるときれいな生け花になる。自宅に持ち帰って部屋に飾ると見栄えがする。

 知床観光船の事故は26名もの死者・行方不明者を出す大惨事となった。どこに真の事故原因があるのかは今後の解明を待たなければならないがずさんで安全無視の運航が続けられていたことに驚かされる。勿論、運航会社の安全を無視した儲け主義の体質が事故の直接的原因であることは論を待たない。こうしたことがあるたびに監督官庁のずさんな監査体制に驚かされる。ずさんな運航状況はきちっとした監査をしていたら避けられたのではなかろうかと思われる。

 医療界でもジェネリック医薬品の不正があり大問題となった。ジェネリック医薬品は先発医薬品と同等な効果を持ち公的機関の検査を経ているから安全と厚生労働省は宣伝し、ジェネリック医薬品の使用を促している。厚生労働省は「添加剤の成分や配合量が先発医薬品と異なっていても、有効性や安全性に違いが出ることがないように、ジェネリック医薬品の承認審査においては、生物学的同等性試験のデータの提出を求めて、主成分の血中濃度の挙動が先発医薬品と同等 であることを確認しています」と言う。

 「生物学的同等性試験とは、ジェネリック医薬品が、先発医薬品と治療学的に同等であることを証明するために実施する試験で、ヒト(健康成人)に先発医薬品とジェネリック医薬品を常用量投与して、両者の血中濃度の推移に統計学的な差がないことを確認するもの」。従って、安全性、効果が証明されていると宣伝している。

 しかし、これはいずれも書類審査であり、提出されたデータはメーカーが出したもので、そこに不正が行われていたら、検査をすり抜けて合格していくことになる。外国ではこの生物学同等試験に審査を受ける医薬品の代わりに先発品を用いて試験を行いそのデータを提出した事例を知られている。メーカーの性善説に基づいて、そのデータを鵜呑みにしたら間違いを見抜けない。一流自動車企業でも堂々と検査データを長年ごまかし続けていることが明らかになっている。必要な立ち入り検査・強制調査を伴っていない監査は機能しない事を示している。

 

令和4年6月1日

国立病院機構指宿医療センター 総合内科
 中 村 一 彦